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これだけ言いたいことを言ったけれど、胸の中のもやもやは全く取れた気がしない。
それに、その答えを聞きたくない。
だから今度はパッと立ち上がって、ソファーの上に置いてあるバッグとコートを手にして、そのまま早足で玄関の方へ歩いていった。
「ちょっ! 彩未! どこにいくんだよっ!」
琉生はそう言いながらすぐに追いかけてきたけれど、
「ごめん。わたしまだ、受け入れられないから。もし話があるなら、また今度にして」
そう言ってドアノブに手をかけたけれど、
「待てって!」
琉生は耳を塞ぎたくなるほどの大きな声でそう言って、また後ろからぎゅっと抱き締めてきた。
「やっ! 琉生、離して!」
「やだ。離さねえ」
その言葉にまた、どきんっと胸が高鳴る。
こんな風にされると、わたしは琉生のことがめちゃくちゃ好きなんだと思い知らされる。
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