こころ

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こころ ______________ 「恋をしたようなんだ。」 それを聞いたとき、私は耳を疑った。 恋なんてものからは無縁だと思っていた彼奴から、こんな相談を持ちかけられるとは。 その時何か私の中の黒い部分が流れ出した。 「精神的に向上心のない奴は馬鹿だ。」 私が1度言われ、お前が1番言われたくない言葉。 案の定、身体を強ばらせたお前。 初めての恋を持て余し、苦しんでる心に言ってはいけない言葉を突き刺していく。 ーもう、やめろ! 心の奥底で最後の私の良心が叫んでいるような気がした。 それを淡く感じながらも、私の口は水を入れ過ぎた桶のように、簡単にその言葉を吐き出してしまう。 破滅への一言を。 「精神的に向上心のない奴は馬鹿だ。」 これでお前の恋心が粉々に砕けてしまえばいい。 ーそして私を見てくれ! しばらく地面を見つめたまま、微動だにしなかった彼奴が、不意に、誰へともなく呟いた。 「馬鹿だ。」 ーお前を誰にも渡さない 確かに私はその時強く、そのことを思った。 「僕は、馬鹿だ。」 ーこれでお前を失わずにすむ。 愚かな私はこの時、この言葉の真意をはかり違えたことに気がつかなかった。
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