第1章 報酬280億円

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瞳孔は縦に割れ、猫のような、しかし比べ物にならない獰猛さを秘めたその目は、じっとこちらを見ていた。 背後で女の子が声にならない声を挙げる。 それでもカイムとのにらみ合いは続いた。 今少しでも目を離すと次の瞬間には腹部辺りに深々と嘴が刺さっていそうだ。それもこいつに嘴があればの話だが。 死と襖一枚で向き合っているかのような緊張感の中で、自らの思考にぼんやりとツッコミを入れる。 すると赤い目が一瞬右に動いた。勿論こちらからは左になるわけだが…一体何だ? しまっ!! 誘導だった。鳥の魔物なんぞにそんな初歩的な陽動を成功させてしまった事にかなりの自己嫌悪を抱きながら、瞬時に清聖を縦に構える。 首だ!! とっさに左手を峰に当てると、同時に堅いものをガツッと受けとめ、上方に受け流した。 ギャリッという不快な音を周囲にこだまさせながら、その堅いものは一瞬だけ姿を見せた。 な、あれは…。いやまさか…。 それは翼だった。どす黒く光沢のある一枚一枚の羽根が、この広場に僅かに射し込む夕陽を血のように赤く反射する。付け根から先まで二メートルはあろうかという大きさだ。 接触等の衝撃で一瞬見えるようになるようだ。恐らく不可視を作り出すために纏っている魔力が衝撃で散ってしまうためだろうと推測した。それと同時に、疑問も出現する。 まぁ、そちらはこいつを討伐した後にゆっくりと観察させてもらうとしよう。 左足を半歩引き、腰を落とす。刀を左側に低く構え、左手で刀身に魔力を宿す。 付与するのは雷の属性からなる魔の力。青白く光る刀はバチッと威嚇するような音をたてながらスパークを発生させる。 魔力を十分に蓄えると、両手で刀を握り直した。カイムの目からはなにも読み取れない。 少し弾き飛ばされ、カイムとの距離はおおよそ5メートルといったところ。見える部分は、その両目のみ。 しかしそれで事足りる。その両目の下方辺りには頸部があるのだから。………恐らく。 一際激しいスパークが辺りを照らした瞬間、弾けるように動いた。近付くわけでもなく、この場で刀を振りかぶる。 距離は5メートル。いくらこの刀が長いとはいえ、到底届かない。しかし、それは問題ではない。狙うはその赤い"おめめ"の下!!
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