第1章 報酬280億円

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刀に付与した雷の魔力で、刀を延長する。 刀の剣先からさらに青白く発光する刀身が現れた。長くは維持できない。狙ったところで最大射程になるように魔力を解放する。 射程は十分。恐らくカイムの頸部があろう所目掛けて、刀を振り切った。 天源流"閃(ヒラメキ)" 雷が墜ちたような爆発的な音を立てながら辺りにスパークが霧散する。何かを斬った感触はない。 赤い目はこちらを見たまま、同じように何も読み取れない。 しかしゆっくりと、両目が水平を保ったままスライドしたかと思うと、そのまま地面に落下した。 不可視の魔力が散っていくと、そこに断頭された真っ白な鳥の魔物が姿を現した。今までカイムの本当の姿を見たものはほとんどいないとされ、その姿は言い表せられないほどの美しさだという話であったが、確かにそうかもしれない。 白いというよりは銀色に輝くその毛は、もうすっかり暗くなってしまった森の中でも輝き、死してなおその威厳を保っている。 これだけの姿形を普段は隠しているとは、なんという皮肉。いや、もしかすると人に見つからないようにという不可視の能力は、そこから起因しているのかもしれないな。 しかし、このカイムは恐らく普通ではない。全身を覆う白い羽毛とは対照的に、翼の先には強靭な爪がついていた。先程一撃をいただきそうになった爪だ。これには見覚えがある。 アイアンベアーというS級の魔物だ。全身が金属製の鱗に覆われ、強靭な爪を持つ。そいつの爪にそっくりだった。 これはどういう事なのか。カイムの姿に関しては諸説あり、その姿を記したものはいくつかあるにはある。しかしそのどれにもこのような爪は描かれてはいなかった。本当にこいつはカイムであったのか、アイアンベアーの爪を持っていたのはカイムの知られざる能力か、そうでなければアイアンベアーとカイムの間にできた異種だとでもいうのか。 断頭された、おそらくはカイムであろう死体をじっと見つめ、答えのでない疑問について考えるのをそこで諦めた。 踵を返すと、食料として連れ去られていた人達の元へと近づく。 その三人の少女は、衣服は所々破れ、身体の至るところから出血していた。 「大丈夫ですか」 そう言って手を伸ばしたが、傷だらけの少女達はそれにさえ怯えた様子を見せる。
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