第1章 報酬280億円

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女の子達の精神はもうかなり傷付いている。 それに親からの叱責はこたえるだろうと、慌てて口を挟む。落ち着きを失わず、説得力のある声でゆっくりと言った。 「お父さん…落ち着いてください。娘さんは無事です。この子達は魔物に連れ去られていたんです。今は何も責めないであげてください。ただ、この子達の無事を喜んであげてください」 それだけ言うと、その男性はゆっくりとこちらを見た。そして、もう一度目を見開いて、今度は固まってしまった。 「ま、まさか………"白翼"様」 その言葉に、遠巻きに見ながら通りすぎて行っていた人達が全員立ちどまってこちらを見た。あまり大きな騒ぎにはしたくはなかったのだが………まぁ、こうなればこれを利用させてもらおう………。 「皆さん。この子達のご両親を御存じですか?お知り合いの方がおられれば、失礼ながら至急ここに来るよう連絡をとっては頂けませんでしょうか?」 その言葉に、時が止まったかのように反応を見せないこと五秒。戸惑いながらも仕方なく二言目を口にしようとしたときだった。 「あの…」 「"白翼"様だぁぁぁぁ!!!」 「うそっ………!!!」 「まじかよ本物かよ!!!」 「あの子草部のとこの娘だ!!!三日前に居なくなって探し回っとる!!!教えたらにゃあ!!!」 「もう一人は入野のとこのだ!!!はよう呼んだれ!!!」 「誰か妻を呼んでくれー!!!三丁目の西野だ!!!」 「大変だ大変だ!!!長老ぉ!!!"白翼"様がぁぁ!!!長老ぉぉぉ!!!」 ちょ、長老はいいよ………。 数分もしないうちに、辺りは人だかりになってしまった。ローブの中を覗き込もうとする若者もいれば、両手を合わせて拝んでくるおばあちゃんもいる。女の子三人は少し居心地が悪そうにどこかに行こうとしたが、それを呼び止める。腕に抱かれている女の子はもう顔が茹で上がっているように真っ赤だった。 そして数分後、娘を呼ぶ声が聞こえてから十数秒かけてその人だかりを掻き分け、女の子達の両親が集まった。涙ながらの再開が終わると、淡々と説明に入る。 「娘さん達はカイムという魔物に連れ去られていました。彼女達を責めないでください。彼女達は本当によく頑張りました」
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