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三人に笑いかけると、三人とも顔が赤くなってしまった。あまり大勢の前で誉めるものじゃなかったかな………。でもあの状況で強く精神を保っていたことは、それだけですごいことだと、素直にそう思ったのだ。
「そしてこれからの事ですが、そのカイムという魔物は討伐数があまり多くありません。私の方で外傷は完全に治癒しましたが、他に何かあってはいけません。一応王都の大きな病院で検査を受けてもらった方がよいかと思います。
御両親の方々にはできるだけこの子達の側にいてあげていただきたいのですが、今すぐここを立つ準備をしていただくことは可能でしょうか?
大丈夫。念のためだよ…」
最後の言葉は少し不安が射した三人の女の子に向けてだ。いくら討伐数が少ないといえど、魔物からうけた傷で感染症等が生じることなど、滅多にない。しかし、あのカイムは特別だ。
本当に"何かあってはいけない"
その一心からの提案だった。
両親は快く承諾し、三人の両親に加えて幼い兄弟なども連れてくることになった挙げ句、10人を越える大所帯になってしまった。
そこでやっと到着した長老が"馬車を…"と言ったが、丁寧に御断りした。
「"転移"」
次の瞬間には、また違う風景が広がっていた。
眼前には大きな白い建物がそびえ立っている。そう。ここは王都。その国立病院の前だ。
もう夜という事もあり、入院患者の方以外には患者の姿はない。
"おぉ"という声が大人達から漏れる。それが、建物に対してなのか、10人もの人数を"強制転移"させた事に対してなのかは解らない。
「さぁ行って。大丈夫、痛いことは何もないから。三人には一応今晩入院していただいて、恐らく検査は明日の午前中になるとは思います。既に"癒者"には連絡してあります。御家族の方は娘さんと一緒に寝るか、宿をとるなら隣の建物がそうですので、代金は私に請求しておくようフロントに言ってください。そちらにも連絡はしておきますので」
そこまで言うと、女の子三人に向き直った。
「今日はゆっくり休んで。大丈夫。ゆっくり眠れるから。悪夢を見ることはありません。君達はさっき悪夢から目覚めたばかりなのですから」
少女達の笑顔を確認し、その日はその場を後にした。
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