第1章 報酬280億円

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―――――――――― 翌日。 ここは人が行き交う大通り。例のごとくフードつきの白いローブを着た人物は巨大な建物を仰いでいた。 露店の活気ある呼び込みの声や、わいわいと賑やかに買い物を楽しむ若者。今日の夕飯のメニューを考えながら幼子の手を引く母親。暖かい春の陽気に人々の賑やかな声は、とても清々しい光景だった。 そしてそんな通りに門を構えているのは、三大国の中で東に位置するアルテミスの首都である王都オーラム。国内において最大となる、ギルド"天の導き"だ。その門には天使が歌っているようなマークが記してある。実際の建物はと言うと、簡単に言ってしまえば城だ。レンガ調、天に向かって伸びる塔。かなりの広さを誇る。中を知っている者からすれば、一階ロビー以外は本当に無駄なスペースであるのだが、昔の人がこう造ってしまったのだから仕方がないとも言える。 ギルドとは、国中の数々の困り事と依頼とが届け出られる所で、それに対して、適任の人材を斡旋する中継機関。一応国の機関だ。 入り口の門には特に見張りなどはおらず、警備などもない。よってセキュリティチェックがあるわけでもないので、何事もなく門を通過し、正面入り口から入る。 中に入ると、外が晴れ渡っていただけに少し薄暗く感じる。千人程なら余裕をもって入れるだろうほどの広さのロビーが広がっていた。 今は中には数百人の人がいたが、若い屈強な男から少し年配の方。スタイルの良い女の人など、老若男女が入り交じっていた。ただ全員が"ほんの少しだけ"筋肉質なだけである。 外に負けず劣らずの喧騒だったが、何故か静まり返ってしまう。毎回こうなのだが、いつも疑問で仕方がない。 気にせず受付まで歩いていくと、到着する頃にはフロア全体の沈黙と視線を引き連れていた。 「すみません。報告です」 受付の綺麗なお姉さんに声をかけると、慌てながら手元の書類を探し始めた。右手でポケットからカードを一枚取り出すとカウンター越しに渡す。 「昨日のお昼頃に受けた任務です。SSランク。魔物カイムの討伐。ギルドカードです。SSSランク、二つ名"白翼"。任務完了の報告です。カイムの場所はここです」 白色のカードとカイムの死体を置いてきた所までの地図を簡単に書いた紙を渡す。 女性はそれを両手で丁寧に受け取ると、 「しょうひょ…少々お待ちください!」 と顔を赤らめて言った。
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