第1章 報酬280億円

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昔この受付役を手伝った事があったなぁ…。 結構忙しいんだよな。 数十秒程、女性が書類を探して紙を捲る音だけがしていた。少し時間がかかっているなと思い、"慌てなくて大丈夫ですよ"と冗談混じりに声をかける。 女性は慌てて返事をすると、また書類に視線を戻す。そして今度は数秒で見つけ出したようだ。 「ありました!!!こちらギルドカードになります。振り込みは明日以降となりなすのでご確認ください。お疲れ様でした」 「あなたもお疲れ様。頑張ってね」 女性に精一杯の笑顔と控えめに手を振って、受付のすぐ横にある関係者専用の扉を通り抜けた。 それと同時に、後ろのロビーではどうやら止まっていた時がまた動き始めたようだった。 少し通路を進むと、角を曲がり、すぐ手前の壁に掛かっている姿見の前で、深めに被っていたフードを脱いだ。 相変わらず、この白いコートは自分の真っ黒の髪には似合っていないと感じる。フードにも負けず、外に跳ねている髪の毛を撫で付けながらそんなことを考えるのはもう毎日の事だ。歳も15にもなったのに、顔立ちはまだ幼く、未だに女の子に間違えられてしまう程。そもそも身長が160㎝しかないのが原因だ。踝までのロングコートが似合わないのも、女の子に間違えられてしまうのも、"あの人"に未だに子供扱いされているのも、全てはこの身長のせいなのだ。 そうやってまたいつもと同じようにため息をつく。 最後に鏡の中の自分に一瞥をくれてやると、廊下を奥に進む。 少し豪華な装飾の扉の前で立ち止まったのは、数分後だった。それほどにここは広いのだ。 扉を数回叩くと、中から女性の声が返ってくる。"入るよー"と簡単に挨拶して扉を開けると、部屋の奥から女性が一人駆け寄ってきていた。 「おつかれさま~!」 その言葉を聞いたときには、返事をしようとすれども、息すらできない状況にあった。 その女性は駆け寄るだけでは飽きたらず、そのボリュームのある胸に顔を埋めるように抱き締めてくる。顔が急激に赤くなるのを感じた。 そして、く、苦しい………。これは労っているのか、殺そうとしているのか…。 そうやってじたばたもごもごしていると、生命の危機を察知してくれたのか、やっと放してもらえた。 「静風ゴホッ!!今のは…ゼェ………ヤバかった…」 「あちゃ~ 。ごめんね空。今度から気を付けて抱き締めるようにするから…」
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