第1章 報酬280億円

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四年?いくらなんでも長すぎる。 慌てて書類に目を通すと、まず最初に"護衛任務"という文字が目に入る。確かに対象を護衛・保護する類いの任務は長期的になることが多い。しかし、この場合四年もの歳月は"ありえない"といっても言い。 今までにも護衛の任務についたことは何度もある。しかしその全ては、一日のみ。 その対象の多くは国王だった。他国への訪問であったり、国内での祭事への出席、その際の護衛である。 何故最長で一日なのか、何故ならそれ以上の報酬を出せる依頼主がいないからだ。護衛任務において依頼主は、護衛のランクと雇う期間、それらに基づいた報酬を用意しなけれぱならない。つまり、強い者を雇うほど、期間が長いほど金がかかるということだ。一応空は世界でも数人しかいないSSSの称号を持つ者だ。相場で言えば、国しか依頼人がいないのだ。 別に空はそこまで高い報酬を求めたことは無いのだが、相場のせいで依頼が上ってこないのが現状だった。 昔はよくギルドランクを低ランクに偽装してもらって、魔物が出るから一日だけ泊まり込みで護衛してくれという数千円の任務を受けたものだ。みんな空を歓迎し、受け入れてくれた。あの頃はそんな"家族の温かみ"みたいなものに少しでも近づきたかった………のかもしれない。 話は逸れてしまったが、書類に再度目をあてると、やはり依頼主は国。しかしSSSになってから、一日の護衛任務の報酬相場は数千万だったことから、SSSを四年間雇うというからには、相当な覚悟があるという事だけはわかる。 しかし、空は次の要項を見て、全てを察した。 護衛対象:神崎 弥生(カンザキ ヤヨイ)。大地 悠介(ダイチ ユウスケ)。水城 雫(ミズシロ シズク)。紫電雷斗(シデン ライト)の四名。 期間:四年 護衛時間帯:フェアリー魔法学園内に入学、授業等を含め、基本的に二十四時間とする。 報酬:280億(応相談) 顔を上げると、静風は今までで一番といっていいほど、優しい表情をしていた。 「どう?」 きっとこれは、静風と国王からの贈り物という事だろう。 空は今まで、学校に行ったことはない。行きたくないわけではなかった。実際に静風から書類をもって来られたこともあったし、義務教育という制度もある。しかし国王を脅し…説得までして、学校には行かずにこのギルドにおいて任務をこなす毎日を選んだのだ。 何故なら空は自分の"使命"がわかっているから………。その為に今まで力を求めてきた。
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