第2章 急がば回れ

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"私の空へ。 今日はちょっと忙しくて、空の出発に立ち会えなかったみたいです。なので、仁兄の所に先回りして、仁兄に頼んでこれを渡してもらうことにします。 白翼のギルドカードは使えば一発でバレてしまうので、学園生活中はこちらを使うように。この間のカイムの一件の報酬をそちらに振り込んでおいたので当分は生活できると思います。写真は毎年ギルドで受けてる健康診断の時のを裏から手に入れてるものを使用してますが、それでよかったでしょうか? 他になにか困ったことがあったら、なんでも連絡してください。次の瞬間には会いに行きます。もちろん空から会いに来てくれてもいいのよ。 もしそっちで、「私の次に」、好きな人が出来たら是非教えてください。次の瞬間にはそいつに会いに行きま" ついついそこで、手紙を燃やしてしまった。 過保護もいい加減にしろっての………。それになんだよ好きな人って………、まだ友達もほとんどいないんだよこのやろう!! まぁいいや。 ………………ありがとう。 よし、お菓子も食べたしそろそろ寮の方に行くかな。 そう思って大和と二人立ち上がると、寮について何も聞いていない事に気がついた。 「ありがとう仁さん。 今日はもうこれで帰るけど………。そういえば、寮とかについては?」 「おぉそうだった。その学生証がそのまま部屋の鍵になってる。ドアにかざせばロックがはずれる。もう教材なんかが運び込まれてるハズだ。 それで早速明日から授業なわけだが、明日まずはここに来るといい。担任の先生を紹介するでな。そっから教室まで連れていってもらえ。それくらいだな。今日はゆっくり休め!」 最後に結構重要なことを何個かすらすらと言ったような気がするが、それがこの人だから仕方ないのだ。細かいことは気にしないと言えば聞こえは言いが、少し忘れっぽい。 そこら辺りは双子でも、わざわざ細かいところまで気を使って、ギルドカードを届けてくれた静風とは正反対だと常々思う。 半開きの扉から顔と手だけ出して手を振ると、仁さんも今までに見たことのないくらいの笑顔で手を振り返してくれた。空にはいつも優しくしてくれる仁さんだが、今日は今まで以上に優しかった。 本当に空の入学を喜んでくれている。 もしかしたら空以上に………。 そう思うと、学校になんて行かなくても、自分が最高の友人に囲まれていたんだということを感じたのだった。
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