船酔い

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「う…っ」 ――やってしまった。 ちょっと甘いもの探しにサゼルメリクまでやってきたが、来るまでの船で船酔いをしてしまった。あまりの気分の悪さに動けそうにもない。 さすがに…ここでずっと座りっぱなしという訳にもいかないし、動かなくてはいけない。しかし…動いたら…大変なことになる気がする。 これからどうしようかと下を向いていたら、視線の先に影が入って立ち止まったために、思わず見上げる。 「キミ、大丈夫?」 そう言った男性は他の人たちとは少し違った服装をしていて。多分、何か上の役職についている人間だろうと考える。 「……船酔い、」 「え?」 「…船酔いして、気分悪いだけ……です。だから…大丈夫、です」 ぐらぐらと意識を手放しそうになりながら、ゆっくりと言葉を発した。こんな事で倒れる訳にはいかない、と踏ん張るが塩の香りがするこの場所では、船の中を思い出し更に気分が悪くなってくる。
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