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そこまで聞いて二人の老婆は良平の願い事に口出しをするのは諦めた。
そしてスカーレットは良平の右手に、ターコイズブルーは左手にそれぞれ銀色の容器を握らせた。
ひんやりとした感触に、良平はなぜだかとても興奮した。これから何かとても良いことが起きそうな予感がこの容器にはあるような気がした。
「私たちこれをお渡しする方に」
「そうそう。必ず申し上げておりますの」
「ハッピーピルズの『ハッピー』の効果効能の持続力は、ある人には瞬きほどのもの」
「そうそう。またある人には生涯続くほどのもの」
そして最後に二人は口をそろえてこう結んだ。
「良平さんの未来に幸いあらんことを」
「あ……。はい……」
あまりにも芝居じみている二人の様子に唖然としたが、受け取った二つのピルケースをデイパックのZEBRAを入れた場所にねじこんで、良平は一卵性双生児の老婆の元から、そして新宿御苑から立ち去った。
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