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中央線沿線の自分のアパートの外壁が見えると、良平は新宿御苑で起きた出来事は白昼夢だったのではないだろうかと思い始めた。
自分の部屋の番号がふってある郵便受けを覗くと、何通も封筒が差し込まれていた。
この中の一通くらい、内定の二文字が書かれていたらどんなにいいだろうか。
就職活動と言うものは自分を消耗させる。
もともとさほどない自信はどこかに飛んでいき、自分という存在そのものが無価値に思えてくる瞬間がある。
自分の部屋に入り、良平は封筒を一つ一つ丁寧に開けたが、どれもハズレばかりだ、いらだちのあまり、すべてぐちゃぐちゃに丸めて、床に投げた。
そして、ベッドに仰向けに寝そべり、天井の壁紙をぼんやり眺める。
本当に、ゆみみんの犬になるのは悪くないかもしれない。
そう言えば、赤だとか、緑だとかあの二人は言っていたけど、あの銀色の容器の中身を見ていない。
良平はむっくり起き上がると、床に投げ出していたデイパックを掴んで、ポケットのファスナーを引っ張った。
一人の部屋に引き裂くようなその音が妙に響いた。手探りで中を探ると、まずZEBRAが手に触れたが、それは無視して、二つの銀色の容器を掴んだ。
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