モノゼブ

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まさか、あの赤いマーブルチョコで、本当に犬になれてしまっただなんて。 良平が驚愕の心境で、自分の姿を眺めていると、頭に何かが飛んできた気配がしてサッとよけた。 「よけんなよ。この馬鹿犬! アタシの部屋に入るなって、何度言ったらわかるわけ? ほんとに馬鹿じゃないの?」 良平は自分に何かを投げた人物を見て唖然とした。目を吊り上げ、湯気を立てて、怒り狂い、良平に投げつけたクッションを拾いそれで良平の頭をはたき始めた、この人物こそが、良平の大好きな、DG55の椎名由美香その人だったのだ。 「由美香ちゃん、やめて。ロビンは悪くないのよ。たぶんさっき私が掃除したときにドアを閉め忘れたの。だからきっと私のせいよ」 後ろから聞こえた他の人物の声に由美香は動きをぴたりと止め、くるりと良平に背を向けて、今度はその人物をクッションではたき始めた。 「クソババア! アタシが犬の臭いが大嫌いなの知ってんのに嫌がらせ? もう一回掃除しろ!!」 「分かったわ。もう一度ちゃんと掃除するから……。お願いもうやめて」 由美香は息が上がり始めてもなお、力つきるまで、クッションで女をはたき続けてから、クッションを放り投げて、自分の部屋を出ていった。
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