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「ロビン……。ゴメンね。大丈夫かしら?」
由美香に殴られて、うずくまっていた女は良平にそう声をかけた。
良平は不思議だった。見知らぬ女だというのに、この女に「ロビン」と呼ばれると体にありったけの優しい気持ちがあふれて、勝手に女のそばまで行きキュンキュンと鼻声で甘えた声で鳴いてしまったのだ。
痩せた女だった。顔はよく見なくても椎名由美香に似ていて、どうやら母親のようだった。
「今日は、なんだか大きな仕事が他のメンバーに決まったみたいで、機嫌が悪いの。ね、ここには入っちゃだめよ? キッチンへ行きましょう」
由美香の母親はロビンになっている良平の頭をゆっくりと優しく撫でて、ゆっくりと起き上がると、のろのろと動き始めた。良平はその後をついていった。40歳いくかいかないかだろうか? けれど随分やつれて見える。と良平は思った。
キッチンはぐちゃぐちゃだった。どうやら、由美香が用意されていた食事を床にぶちまけたらしい。
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