モノゼブ

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好きなアイドルの本性にがっかりした良平は、犬になりたいというばかげた願い事を叶えてしまった、馬鹿な自分をののしりたくなった。こんなの今すぐにでも、なかった事にしたい。 「ロビン、そこにステイして。食器がたくさん割れてるから、踏んだら大変」 良平は由美香の母親に言われるがままに、じっとしていた。そして、その寂しい、悲しい背中を見ているうちにいたたまれない気持ちになった。 犬になりたいと思ってしまったことを、地元、新潟にいる母親に初めて申し訳なく思ったのだ。 良平の母親は、良くも悪くも田舎の主婦らしい人間だった。中肉中背で、周りに世話をやいたり、噂話などし、なによりもふてぶてしい逞しさがある。そして、大体いつも笑ったり、怒ったりしていていて、おおむね、のんきで幸せそうだった。 そして母親と言うのはどこもそんなものなんだろうと思っていたが、由美香の母親はどうだろう?  少なくとも、良平は自分の母親をあんな風にののしったり、殴ったりしたことはない。
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