モノゼブ

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由美香が、寝室に入るのを確認すると、母親は、良平が入っているケージに入ってきた。 「芸って言われても、どうしたらいいのかしらね。来週までって3日しかないわ」 そう言って母親は、乾いた声で笑い、良平を抱きしめた。 「まさか、こんな風になるなんて思わなかったの。由美香の夢が叶えば、あの子だけでも幸せになると思っていたのに。あれでもね。アイドルになれたら、きっとママを幸せに出来るって言うのが小さかったあの子の口癖だった。母子家庭で、貧乏だったのが、嫌だったのねきっと。だから、私はあれを飲んだ時、由美香がトップアイドルになれるようにと願った」 あれ。まさかあれって。 「ハッピーピルズ。新宿の地下街で、赤い髪と緑の髪の双子からもらったの。よく考えたら、たまたまだったのかもしれないけど、あれを飲んでからすぐ、由美香は松村さんに認められたものね。ごめんね。ロビン。いつも変な話ばかり聞かせてしまって。ふふ。私は松村さんは嫌いだけど、ロビンをくれたことだけは感謝しているの。大きな犬をずっと前から飼ってみたかったから」
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