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まばらに蝋燭で灯された空間は静まり返っている。
周りには大勢の人間がいるというのにあたしの目に映るのは手前に座る大じい様の姿だった。
あたしたちは大じい様の前に座る。
「よく来たな」
大じい様はこの空気とは程遠いにこやかな笑顔でそう言った。
「さて。君たちが今回の総会に参加したのは他でもない。我が一族のこと。我が家業のことを君たちが知る時が来たからだ。さて。そうだな。我が一族の興りからでも話そうか」
「我が一族は不知火 龍火(しらぬい たつび)が祖先の古い一族だ。昔から物ノ怪を祓う専門の一族だった。祖先は幾つかの“祓い”に関する門下を建てた。それが炎城、神威、御原、宮内の四家だ。昔から物ノ怪を祓う一族は決して多くは無かったが存在していた。そのなかでも一際うちは大所帯だった。何しろ門下の一族が四家もいたからだ。むしろ門下の一族を持っている一族は無いに等しかった」
大じい様の斜め後ろであたしの、普段はおっとりでマイペースすぎる母が真剣な顔をしてメモをとっている。
「我が一族の力は蒼炎を扱う。炎城は烈火を。神威は雷を。御原は風魔を。宮内は最も扱いずらくのまれやすい闇を扱った。この力を人々は浄穢の力と呼んだ。その名の通り浄化する力だ。 浄穢士は清める力しか持たない。いや“しか持てない”のだ。それが悲しいかな、我ら浄穢士の宿命だよ。だから、皆、医師になりたがる。浄穢士に認められた力は清めることだけにしか作用しない。これがどういうことを示すかわかるかい?」
大じい様はあたしたちの顔を見回した。
「つまり…俺らは穢れを拭うことしか出来ないってゆーのかっ?そんなこと、あり得ないだろ…。人間に対してそんなこと、俺らが、こいつがっ!…心苦しくならないわけないだろ」
拓亜が突然立ち上がりあたしを指差し周りの親族に向かって怒鳴った。
「どういうこと?」あたしは突然のことに驚いて目をしばたいた。
「うちの家業は物ノ怪の悪気を祓うだけに留まらない。人間の痛み、苦しみ、憎悪を祓う。つまり祓うことしか赦されていない」
「それって…物ノ怪を祓えば元に戻るわけではないってこと…」
言葉を飲み込み、脳が理解するまでに数分を要した。
「祓った予後は医師の腕による。幸い我が一族には長けた医師が多い。だからその点に関しては安心すればよい。しかし、浄穢士の痛みは計り知れない。浄穢の力は心の臓に負荷がかかる。 祓うものが暗きものであるが故。それにより浄穢士は短命であることが多い。見ろ。周りの者たちは基本的に若い」
大じい様が周りを見渡すのと同時にあたしも暗がりでよく把握していなかった親戚たちを見遣る。
よく見てみると年代からして1番古参だとしても40前半ほどに見える。
つまりあたしたちの両親ぐらいの年齢がもっともベテランというわけだ。
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