屋敷の姫

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「それはそれはご愁傷様です」 ニヤリ、と、してやったり!というふうに笑顔で返す。 「まぁ、母さんに栗の弁当の残りモン入れてもらったから半分だけ許してやる。あとはいつも通りジュース奢ってくれたら拓亜サマの機嫌は完璧に最高になるんだけどなぁ」 こちらもまたあたしと同じようにニヤリと笑って言い返してきた。 要求された内容にムッとなったが、一応、ごった返した皮カバンの中からブラックの財布を取り出して中身を覗く。 占めたっ!金欠がこんなに嬉しいと思ったことはない。 現財産200円だ。 「残念。あたし今金欠ー。だから他をあたりな」 「は?そんなわけねーだろ。だって昨日親父から2000円貰ってただろーが」額に皺を寄せて少し不機嫌な顔になる拓亜。 この顔が意外と一番好きだったりする。確かにいかついけどそれ以上に可愛い。 「あのお金、家に置いてきたの。てか大体拓亜だってこの前お小遣い貰ってたじゃん」あたしだって唯一の全財産を奪われるわけにはいかないから負けじと言い返す。 「俺は金がねーからお前にたかってんじゃねーの。お弁当持って来てやったおかげに奢るのが礼儀だろって話」 「そんなの知らないっ。とにかく今日は奢らないから」 と言って財布を皮カバンに直そうとしたところを取られた。 開けて中身を見た瞬間に顔が輝く。 「200円もあんじゃん。じゃあ、紙パックな。俺のコーヒーと栗のミルクティーの2つ買えるしさ。じゃ、あとでな」 あたしの好きな笑顔を見せるとあたしの栗色の髪を撫でて自分の教室に向かった。 あたしはそこでやっと自分の教室の前にいることに気づいた。
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