屋敷の姫

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表情からは緊張など見てとれない彼女も緊張していたらしい。 あたしが予想外そうな顔をしていたからか横目であたしを見た柚葉はあたしの頭をはたいた。 「なによ。緊張してわるい?あんただけが緊張してるとでも思ってる?うちら全員緊張してどうにかなっちゃいそうよ」 柚葉は不貞腐れたようにそう言った。 「そんだけ言えりゃ、柚葉、お前は大丈夫だろ」 灸はそんな柚葉に対し、ククっ、と笑いながらそう切り返した。 「そうそう。お前がそんなんで安心した。お前がそうなら俺らはみんないつも通りでいられるからさ」 翔護は灸に賛同し、暖かそうな笑みを浮かべる。 「あたしもほっとした」 そうはにかむと柚葉はぶすっとした顔であたしを見たけど照れ隠しなのは丸見えで柚葉の手をつかんで大広間に向かった。 大広間は四方を特殊な色の和紙で造られた障子で囲まれた造りになっている。 南の障子は炎城家を表す薄い赤色。 西の障子は宮内家を表す濃い黄色。 東の障子には神威家を表す透かし模様の緑色。 北の障子は御原家を表す黒に近い色に染められ綺麗に色づいている。 いまからこの障子を自力で開けて四方からあたしたちが出ていくことを想像すると足がすくんで呼吸があらくなった。
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