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「─自転車、見たいな」
思わず、わたしは呟いていた。
「あの、きれいな空色の自転車」
「……」
俯いて返事を待っていると、拓己がくるりと背中を向けた。
曲がり角に立つ自動販売機に向かい、真っ直ぐ歩いて行く。
ポケットから小銭を取り出し、投入口に入れてから、
「何飲む?」
「……」
戸惑うわたしを見て、ふっと微笑む。
「この時間にキッチンに飲み物取りに行くと母ちゃんが起きるから。
ここで二人分買って行こう」
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