第12話

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　今日も、夜から雨の予報だった。

　すぐ隣で吹き鳴らされる日南子のクラリネットを聞きながら、わたしは音楽室の窓から空を見上げていた。

　灰色の重そうな雲からは、今にも雨粒が落ちてきそうだ。

　─帰りまでもつといいな。

　一応、置き傘は持って来てあるから、昨日みたいなことにはならないけど─。

『これ、返さなくていいから』

「……」

　昇降口で聞いた抑揚のない拓己の声は未だにはっきりと耳に残っている。

　暗がりに消えていく黄色い傘が脳裏を過り、わたしはそれを振り払うため、個人練習に集中することにした。

　譜面をめくって最初まで戻し、ふと顔を向けると、わたしの顔をじっと見つめる日南子の視線とぶつかった。