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「……何?」 「ううん、なんでもない」  さっさとマウスピースを咥えて練習を再開した日南子に首を傾げ、わたしも始めのフレーズを吹き始める。  大きな大会の予選を奇跡的に通過したわたしたちの部は、本選に向け本格的に練習に取り組んでいた。  顧問の先生は元々のんびりした人で、今回は記念参加のつもりでいるようだが、部長の北村先輩をはじめ引退を控えた三年生たちは本気で賞を狙っているらしく、音楽室には今日もピリピリとした空気が漂っている。  譜面を追いながら、わたしは手ごたえを感じていた。  ─今日、調子いいかも……。
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