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 拓己のことを言われるのは、自分のことよりずっと辛かった。  ここで聞いているだけで胸をえぐられていくようで、耳をふさぎたくなる。  ─もう、シューズ忘れたことにしちゃおうかな……。  耐え切れず、この場を去ろうと一歩後ずさりした時だった。 「ていうか芹香、……もうやめといた方がいいんじゃない? 二ノ宮」 「だよねー。 さすがにあたしたちもドン引きっていうかさ」 「このままだとあいつと一緒のくくりにされちゃうよ?  やばくない?」  少し間があって、か細い声が聞こえた。 「うん……。 わたしもちょっと、……正直、もういいかなって」 「……」  わたしは俯いていた顔を上げた。
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