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「確かに、俺もそうであってほしいと思うよ。
拓己も絶対に締めたって……ちゃんと確認してから渡したって、取り調べの時、必死で言ってたらしいし。
だけど警察の検証で─まあ、検証がなくてもブレーキワイヤーが事故の衝撃で緩むようなもんじゃないってことはどう考えても明らからしいんだけど─。
それで拓己も何も言えなくなったんだよ。
本人は、めちゃめちゃ辛かったと思う」
『……締めた、つもりだった。
ワイヤーを締めて、ブレーキが利いてるかちゃんと確認して……。
その上で俊輔に渡したつもりだった』
自分の手のひらを見つめる拓己の目は、空虚感に溢れていた。
「お店にはおじさんがいたのに、……どうして拓己が修理なんて……」
「もちろん、最初はおじさんがやってたんだけど、途中で店にお得意様が来たらしいんだよ」
「お得意様……?」
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