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「今度、横須賀市と三浦市が合同で開催するスポーツバイクの大会があるんだけどさ。
そのことでいろいろと専門的な質問されて、接客が長引いて。
その間に、代わりに拓己が続きを引き受けたってことらしい。
─タイミングも何もかも、最悪だったんだよ」
兄の目が、悲しげに伏せられた。
「拓己のやつ、口には出さないけど、精神的にかなり参ってると思う。
母ちゃんがおばさんから聞いた話だけど、……自転車に乗ろうとすると拒絶反応なのか気分が悪くなるみたいで。
一度、それでも無理して乗ろうとして、……吐いたらしい」
「……」
「あいつ、負けず嫌いだからさ。
学校だって、おじさんとおばさんにしばらく休むように勧められてるのに、遅刻ひとつせずにバスで通い続けてるんだよ。
まるで、自分に罰を与えるみたいに……。
─俺、心配でたまんなくてさ。
いつか張りつめたもんが切れたら、あいつ……。
そのまま立ち上がれないんじゃないかって」
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