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「あの、何故部長がダメなのでしょうか」
「だってなぁ…考えてもみろよ」
『だって』だなんて子供っぽい言葉を使う部長は初めてだった。
「…何をでしょうか」
額から手を下ろし、私を見下ろしてくる。
その瞳は何処か揺らいでいて不安そうに見えた。
「せっかくチャンスだからって口説きに来たってのに…何を説教してんだかって事だよ」
「…はい?」
口説きに来た?部長が?
え?誰に?
口説くって…それはその人が好きって事?
初めての見る部長の男の顔に…
ズキリと胸が痛む。
けれどそれを部長には悟られたくはなくて平静を装う。
「あの…ここには私しか居ませんよ?」
キョロキョロと辺りを見渡しても私と部長しか居ない。
「おい、泉…お前を口説きに来たんだが?」
腰を屈めて私の呆けた顔を覗き込んできた。
「…へ?」
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