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「私は奥様の代わりになりませんよ」
視線を横へと外して背を向けた。
部長が何を思ってるのか分からない。
「お前は妻の代わりにならないよ」
「だったら…他の人に言って下さい」
代わりにならない…
胸が軋む。
酷い男だと思うのに…それでも嫌いにはなれないのは何でなの?
「お前は俺を何だと思ってる」
「……奥様に離婚されて1人寂しい男?」
「ふ…ハッキリ言ってくれるな」
「すっ…すみません」
仮にも上司に何たる失言。
部長の仕事中とは違う砕けた雰囲気につい、流されてしまったのだ。
「あぁ全く、全然上手くいかねーな」
ガシガシと、頭を掻いてるだろう音が聞こえてくる。
「お前、勘違いしてねぇ?俺は代わりを探してるんじゃなくて、お前に惚れてるから言ってるんだ。夫婦仲は冷めてたんだが籍はまだ入ってたから…お前に不誠実な事はしたく無かったんだよ」
いつもの凛としていて強気な声色ではなく
何処か弱っているようなその声に胸が打ち付けられる。
今、部長は一体何を言ってるの?
私に惚れてた?
夫婦仲は冷めてた?
身代わりを探してるんじゃない?
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