サンタクロース

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慌てて振り向けば、腕組みをして壁に凭れてる部長が居た。 「部長…いつから…」 「…さぁな」 ニヤリと意地悪く笑う顔。 「盗み聞きだなんて質が悪いですよ」 まさか部長に聞かれてただなんて。恥ずかしさを誤魔化す為に素っ気ない態度を取る。 「それは心外だな。勝手に聞こえてきたんだ」 鞄をデスクに置くと、私の居る窓際まで歩み寄って来た。 部長と言ってもまだ若くて。 確か40前半だった筈。 スラリとした長身に涼しげな顔立ち。濃くはない、サラッとしたイケメンという言葉が似合う人だ。 一時期惹かれていた事もあった。けれど、部長は既に既婚者でいた為、諦めて他の男と付き合ったのだ。 今思えば、それが良くなかったのかもしれない。 やはり何処かでそれを見抜かれていたのだと思う。だから結果ああなってしまったのだと、今なら何となく分かる。 「何を見ていたんだ?」 「ちょっと外を…あの、忘年会はどうされたんですか?」 まだ二次会が終わるには早過ぎる時間。 ウチの部署は仲が良いから、大抵皆が二次会に参加する。 だから、ここへ部長が来たことが不思議でならなかった。
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