第二話 陽炎の残火

10/16
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
**** 心中複雑ではあったが、職員会議もつつがなく終了し、俺はプリントの解答を手に教室に向かって歩いていた。 二階の廊下から見える校庭では、野球部がボールを追いかけている。 暑いのにご苦労なこった。 …………。 つうか、何で俺(28歳)と山城先生(25歳男)だけ釘を刺されて、磯谷先生(27歳女)は何も言われんの? 魔が差すのは男も女も関係ないと思うんだが、何だかんだ言って女は得だよなと思う。 まあ、別に良いんだけどな。 気を付けようと思ったのは事実だし。 俺は小さく息を吐き出し、廊下の角を曲がった。 すると―――― ドンッという衝撃と共に、俺の身体は数歩後ろへよろめく。 何が起きたんだ!? 三歩目で踏み留まった俺は、目の前に尻餅をつく男子学生に声を掛けた。 「おいおい入江、人少ないからって廊下を走るなよ。危ないだろうが」 「……すいません」 立ち上がった入江は、何故か焦っているような様子で、その額に汗の粒が浮かんでいる。 「てかさ、入江お前プリント終わったの?逃げたら教科書……」 「プリントは教卓に出してあるんで、すいません!」 渋い顔を作る俺に、入江はチラと後方――――俺たちの教室の方向を見ると、すぐさま頭を下げて俺の横を通り過ぎた。 なんなんだよ、全く。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!