第一話 陽炎の悪戯

10/16
前へ
/32ページ
次へ
喉元に人差し指を突っ込んだ俺は、グッと力を入れてネクタイごと襟を緩めた。 「なあ、相川……それ、旨かった?」 座卓に肩肘をついてジィと見詰める先は、その口元。 未だに味を楽しんでるのか、木の棒をくわえたままのその場所。 「え、美味しかったですけど、やっぱりセンセイも食べますか?」 アイスの棒を手に立ち上がる相川。 けれど―――― 「いや……こっちでいい」 畳に手をつき、腰を上げかけた相川の腕を掴む俺。 そのままグッと引き寄せ、その艶かしくテカる唇をひと舐め。 「やっぱ、甘いの苦手だわ」 なんて口では悪態をつきながらも、その練乳風味の口の中をまさぐる。 ちっせぇ口。 舌先で擽るように動かし、歯列から頬の裏側、舌の付け根の感触を遊ぶ。 おい、いーのかセンセーよなんて言われそうだが、んなもん、文句は無防備過ぎるこいつに言ってくれ。 センセーだろうが、なんだろうが、男の前で妙なアイスの食べ方をしたこいつが悪い。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加