第二話 陽炎の残火

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ガラリと扉を開ければ、走っていく男子にぶつかりそうになった俺。 隣のクラスの牛乳当番は、やけに気が早いな。 ここの自治体は小学校までは給食があるが、中学は牛乳だけに変わる。 だから、昼食時には各クラスの日直が牛乳を運ぶわけだが…… 「お前ら、ふざけず前見て走れよ~!」 俺も昔はあんなだったが、小突き合いながら走ってると危ねーんだよ。 走り去る男子二名の背中に小言をぶん投げれば、「はーい」なんて手を振る奴ら――――ダメだ、分かってねぇよ。 良い返事だけ残して、今度は片方が後ろ向きに走ってやがる。 あ、こけた。 やれやれ。 「ふう」なんて息を吐き出し、手にしていた教科書類を抱え直していると、今度は後ろから声を掛けられた。 「あのー、鬼頭先生。ちょっと良いですか?」
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