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「どうしてもダメですか?」
「んなもん、お前一人丸にしたら、全員採点し直すことになるでしょ。とにかく、解答は漢字で」
「えー、でも宿題はちゃんとやったじゃないですか」
頬を膨らませてジッと此方を窺う相川。
下唇を突きだし俯く仕草で、またつむじが見えた。
…………。
しゃあねぇなあ。
「んじゃ、おおマケで三角1点。それ以上はダメ。ちゃんと漢字で覚えなきゃ受験で困るだろ?」
俺は胸ポケットから赤ボールペンを取り出し、相川の答案を書き直す。
相川知、29点。
自分の控えにも点数を書き直し、更に教室に戻る。
いや、一人だけえこひいきじゃないですから。
『センセー、疚しい事があるからオマケしたんじゃないですか?』
等と言われそうだが、アレは暑さで頭がイカれただけで、現実に俺は何をしたわけでもないから。
勝手に見えた夢にまで文句言われちゃ、堪ったもんじゃない。
大体、俺は教え子にまで手を出すほど女に困ってないし。
まあ、取り敢えず平仮名解答したやつ集合。
サッサと答案の書き直ししねぇと、昼飯食いそこねる。
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