第二話 陽炎の残火

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走り去る入江の姿は、直ぐに小さくなり階段へと消えた。 まあ、野球部は秋の公式戦で躍起になってるから仕方ねぇか。 入江は野球部の中でも足が一番速いらしく、副顧問の山城先生が興奮して話してたっけ。 俺は、取り敢えず気を取り直して教室の前まで来ると、其処で足を止めた。 そして、扉へ手を伸ばし―――― ――ゥゥ……ッ……。 なんだ、この音……つぅか、声? 伸ばしかけた手を止めて、左右を確認する。 が、廊下には俺以外に誰も見当たらない。 ――……ック……ヒッ……ク……。 教室の中だ。 教室の中から聞こえてくるこれは……。 俺は、ガラリと扉を開けてみて、その光景にギョッとした。
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