第二話 陽炎の残火

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俺は机の間をすり抜け、相川の座る席の横に立つと、そのプリントを覗き込んだ。 …………。 「なんだ、お前も終わってんじゃん」 見れば穴埋め形式のそれは、全て答が書き込まれているわけで、俺は持っていた解答プリントを机の上に置く。 「何で泣いてんのかしらんけど、答合わせたら帰って良いから……」 俺は、俯いたままの相川の頭をポンと叩いて、その前の席に後ろ向きに座る。 「ほら……赤ペンは……」 相川のペンケースを、ガチャガチャ漁るがなかなか出てこない。 つーか、金色とか銀色とか、そんな色のボールペン学校で使うのか疑問だ。 「まあ、いいや……はい、これ持って……」 赤ペン探しを断念した俺は、自分の胸ポケットから三色ボールペンを出し、相川に差し出す。 やっぱり三色ボールペンだろ。 これは便利。 それなのに、相川のやつスンスン肩を震わせて俯いたまま、全く反応を示さない。 …………。 なんなんだよ、マジで。
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