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俊輔と二人乗りをするのは、これが二度目だ。
一度目は小学生の頃。
わたしが海辺の岩場で転び、膝を切った時だった。
傷がたまたま血管の近くだったのか、血はなかなか止まらなかった。
次第に怖くなったわたしは泣き出し、俊輔はそんなわたしを自転車の後ろに乗せ、病院目指して風のように走った。
『お母さんが、言ってた』
わたしは泣きべそをかきながら呟いた。
『女の子は、傷があったらお嫁に行く時に困るって。
だから、怪我しちゃダメだよって。
─どうしよう、……傷が残っちゃったら……』
『─俺は、気にしねえ』
俊輔は、少し腰を浮かせ、ペダルを踏みしめて坂道を登りながら言った。
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