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「─待って、拓己」
わたしは拓己の腕を掴んだ。
逃げられないよう、しっかりと握りしめる。
「どこに行くつもりなの。……本人て、いったい……」
「亜優」
拓己の手がわたしの手に重なる。
「ちゃんと戻って来るから。心配しないでここで待ってて」
「……」
一度きゅっと握ってから、拓己は自分を捕まえているわたしの手をそっと外し、駆け出した。
─どうしたらいい?
国道の方に走っていく拓己の後ろ姿を見送りながら、わたしは迷っていた。
言われた通りこのままここで待つか、それとも─。
「眼鏡をかけた、背の高い子。─心当たり、ある?」
「……」
わたしはすぐ後ろに立つ酒井さんの方を見た。
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