こいびとがとなかい。

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「うーん……2人の世界をプレゼント?」 ああ、プレゼント。 さっきも言ってたな。 けど俺が聞きたいのはそういう事じゃなく。 「ここまでどうやって来た?」 俺が寝てる間に、そう何時間も経った訳じゃない。 なのにこんな、言われるままの世界を信じてしまいそうな光景の場所にこれるのか? 「トナカイ力を駆使して?」 「……駆使して?」 「テレポート、的な?」 「………………へぇ?」 トナカイ力で瞬間移動。 それはできない事じゃない。 けれど実行するにはかなりの力が必要なはずだ。 それが出来るという事は、普通のトナカイの仕事に必要な事は全部できる。 俺の知っている以上に、コイツはもっと強い力を持っていたのか。 それならもちろん、車の運転なんてする必要が無い。 俺とする仕事なんて、それこそ、何もないはずだ。 「お前、おかしいだろ?」 思わず睨んでそう問い詰める。 「何が?」 「そこまで出来るんだったら、 本当は、俺の相方になんてなる訳ないだろ」 多少は本人たちの意見も入って、 サンタと共に行動するトナカイは選ばれる。 だけど、ここまで能力に差があったら、別になっても仕方がない。 恋人であろうがなんだろうが、その方が逆に自然にも思える程だ。 そう、それこそ、どうしても。と。 「どうしても俺は、君がいいんだよ」 どうしても俺じゃなきゃ嫌だと、彼は頼んだのか。 そうだったなら、まあ、嬉しいんだけど。と、浮かんできた思いに答えるかのように、そう返ってきた。 「だって、ねえ、 俺は君のトナカイでしょ?」 声は優しく、微笑んでいると思ったのに。 彼の顔は少し、苛立っているように見えた。
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