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「もう会えないから、余計に意味があるんだよ。
わたしも、そうだった。
俊輔に聞きたいこと、いっぱいあったのに。
いつでも話せると思ってるうちに、何の前触れもなく俊輔がいなくなっちゃって。
……後悔でいっぱいだった。
もっといろんなこと話せばよかったって思った。
きっとお母さんも、そうだと思う。
だから……。
─離れて暮らしてる間、俊輔がこの街でどんな風に過ごしたのか、どんな風に育ったのか。
あの電話で、俊輔が本当はお母さんに何を言いたかったのか。
俊輔が何を考えてたのか。
せめて、それだけでも伝えたいの。
─それを伝えられなかったことで後悔を抱えてる、俊輔自身のためにも」
「……」
夜景を見つめながら、俊輔は何かを考えていた。
その瞳に映っていたのは街の明かりではなく、幼い頃に見たきりの、少し色褪せた母親の笑顔だったのかもしれない。
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