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「いや、やせ我慢じゃなくて、ほんとに。
だって、母ちゃんがいなくても亜優の母ちゃんと拓己の母ちゃんがいてくれたし。
兄弟なんかいなくても、拓己と亜優と章ちゃんがいたし。
好きなサッカーだってやれてたし……逆に、何か不満を挙げてみろって言われてもひとつも浮かばないんだよな。
確かに、みんながいなかったら俺、うまくいかないこと全部母親のせいにして、自分の境遇を恨んでウジウジしてたかもしれない。
……だけど……。
言うほど俺の人生って、かわいそうでもヒサンでもなかったよ。
そこらへんの奴らよりずっと幸せだったって、本気で思う。
だから……」
俊輔はごしごし、と鼻の下を擦って、
「『許す!』って。
……母ちゃんに、そう伝えてほしい」
そう言って笑った俊輔の表情はとても穏やかで、─わたしは込み上げるものを堪えながら、しっかりと頷いた。
「分かった。伝える。約束する」
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