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小指を差し出すと、俊輔は照れくさそうに太い小指を絡め、「はいはい、ゆびきりゆびきり」と振ってみせた。
それから、わたしたちはぽつりぽつりと思い出話を始めた。
俊輔の言葉をきっかけに忘れかけていたことを思い出すたび、その懐かしさと愛しさに胸が躍り、わたしはいつの間にか思い出話に夢中になっていた。
そうやって振り返ってみると、改めて感じる。
大切な想い出の中にはいつも必ず二人がいたのだと。
「─そうだ。あともうひとつ、とっておきの話があるんだけど。
口ゲンカでは負け知らずのあの拓己を何度も黙らせてきたという極秘エピソード。聞きたい?」
「うん、聞きたい」
「ただし。
これを言うとあいつ怒って無言でアイアンクローかけてくるからな。
逃げ道確保できてる時しか口にしちゃダメだぞ」
「やっ、やだ、怖い。やっぱり聞かない」
「いいからとりあえず聞いとけって。お前には伝えておきたい」
俊輔はくふふふ、と悪そうな笑いを漏らした。
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