ある男子高校生の憂鬱

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 2人がサッカー部に入部して来てからちょうど一ヶ月。  新入生は5月いっぱいまで練習前に校外を20周走らされるという通称『地獄の外周』という洗礼を受けるのだが、  次々と体調不良を訴えリタイアする部員が出る中、2人は黙々とノルマをこなし、しかも後半の練習でも驚くほど動けていた。  数多い新入りの中でもその姿は目立っていて、2年の部員の間でもたまに2人を意識する声を聞くことがあった。  監督はまだ何も言わないが、2人に対する評価は今の時点ですでに高いのではないかと俺は踏んでいる。 「今日、亜優は?」  涅槃のポーズで横たわり、自分の部屋のようにくつろぎながら俊輔が言った。 「いるよ、隣に。 学校でクラリネット借りて来たらしくて、夢中でいじってる」 「へえ。もうけっこう吹けんの」 「まだまだ。 一緒に入った友達がめちゃめちゃセンスあって置いてけぼり食らってるって凹んでた」 「寺田日南子か。 まあ、あいつはウサギで亜優はカメタイプって感じだし、それは想定の範囲内かな」
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