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「そんな事ないですよ」
「ご謙遜なさらずに。立派ですわ。こんなに広い家に…一人で暮らされているの?」
ついに聞きたい事を聞きにきたのかとダーヴィンは微かに口角を上げた。
「えぇ、あまり家には帰らないので広くても狭くても構わないんですが…ルシアを引き取って暮らそうと考えていましたからね。まぁ、もっとも…そのルシアに嫌がられて返事がこなくなったので伴侶でも見つけて暮らそうかと考えていたところですよ」
ダーヴィンは自傷的にそう言って、わざと寂しそうな顔を見せた。
義母は必死に頭を回転させる。
返事がこなくなったと言ってはいるが、その手紙をルシアに渡していないのは自分だからだ。
ルシアが兄と暮らす事を嫌がるはずはない。
あの当時はまだ旦那との間に子供はできていない、だからルシアを我が子のように可愛がっていた時期。
その可愛いルシアを取られるのが嫌で手紙を渡すことをやめたのだ。
「嫌がるだなんて…」
「いや、いいんですよ。それだけあなた方に大切に育てられて離れたくなかったという事でしょう。友達もいるでしょうし、僕のエゴでした」
ダーヴィンは見事に演じきった。
義母は完全に騙されている。
ここにルシアはいないと、そう確信しているようだった。
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