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ブロローグ
あの日、俺は助けることが出来なかった。あいつを。
雨の中、俺は必死に走っていた。ある組織から女の子を助けるために。
『きゃぁっ!』
『××××××!』
女の子は雨で濡れているアスファルトの地面に転び、後ろからは黒いスーツを着ている男たちが追ってきた。
『え、炎真………。もうダメだよ………』
『バカ! なに弱音吐いてんだ! お前は俺が助けるって言っただろ!』
女の子の手を取って無理やり女の子を抱き上げる。約束したんだ。絶対助けるって!
『でも、ダメなの………。こうやって何度も何度も追いかけられて、私は殺されるんだ………』
『は? 何を言って――――――――』
その時だった。
パァンという、乾いた発砲音が聞こえて俺の体はぐらりと傾いた。
『え…………(ドサッ)』
倒れたと同時に女の子は追ってきた男に腕を捕まれ、拘束されてしまった。
『炎真!』
激しく抵抗するも、女の子の力では大の男の腕を振りほどくことは無理だろう。
そこで俺は意識を失った。最後に目に映ったのは悲しみと諦めの眼をしている女の子だった。
その後、俺は病院へ運ばれ、あいつを助けることができなかった。そして、あいつの姿を見ることはなかった。
その時からだ。この夢を見るようになったのは。
『炎真、分かってたよ。炎真も私のことは助けられないって』
『ま、待ってくれ!お前に言いたいことが……!』
『さよなら。炎真』
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