序章

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『大丈夫よ。お母さんはずっとあなたのここにいるの』 私の胸に手を当ててそう呟いて笑った。 『会えなくても……話すこともできなくても……そばにいるわ……ずっとよ……』 微笑みを称えたまま。 動かなくなったお母さんの手が無情にも力なくベッドへと落ちる。 『嘘……嘘だ!お母さん!お母さんは魔法使いなんでしょ?』 『なら……置いていかないで』 『一人にしないで。ここにいて』 そう泣いて叫んでも、再び動くことはなかった。 その時、私は初めて大好きなお母さんを疑った。 全部嘘だった。 魔法なんてこの世界にはない。 そう思い知らされて。 中学に上がる頃にはそれがゲームや映画、小説の中だけのものだと理解して。 私は高校生になった。
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