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笑う俺を見て、彼女は頬を膨らませる。
そんな姿が可愛くて、俺は顔を赤くしながら彼女に話しかけた。
「君も、してみるかい?」
「え!?いいのっ!?」
「うん。したことある?」
俺の問いに首を振る彼女。
教えてあげるよ、と言うとさっきよりも更に目を輝かせて、彼女は喜んだ。
ふふっ。
俺はもう、この時から彼女に惹かれてたんだと思う。
素直で、笑顔が素敵な、とても優しい彼女。
それからというもの、俺と彼女はいつも一緒にいた。
たわいのないことを話したり、テニスについて話したり……。
俺はそんな日々が続いていくと、信じてたんだ。
彼女の言葉を聞くまでは。
「精市、あのね。……あたし、歌手になるんだ。だから……」
彼女の次の言葉を聞いた瞬間、俺の顔から笑顔がはがれおちた。
「………だから、さよなら」
悲しそうな顔でそう言った彼女は、俺に背を向けて帰って行った。
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