約束

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握っていた携帯電話で森に電話をかけ 「今 着いた。どこ?どこ?」 焦っている私に 「落ち着けって。」  なんか 立場が入れ替わったような気がした。 辺りを見回し 「中央口って書いてある。」そう告げると 「あれ・・俺もいるんだけどな 待ってろ。」 「どこ?ねぇどこにいるの?」 電話をしながら 私も探す。 「千波、今探してるから落ち着けって。」 何か  迷子になった子どものようだった。 涙が出てきた。 逢いたくて焦っている。 励ましにきた私が泣いてどうする。  そう思った。 「千波。」 私を呼ぶ声が聞こえ こちらに向かってくる人影がわかったけど、涙でよく見えない。 あんなに会いたかった人なのに  拭っても拭っても、迷子の子どもになってしまった私は、涙が溢れてくる。 「何 泣いてんだよ。」 そう言って抱きしめたくれた胸からは、懐かしいコロンの香りがした。
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