約束

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その瞬間、ソファーの上のバッグとコートを手に持った。 「森、どうしたの。大丈夫だよ。あんたなら何でもやりこなせるよ。」 携帯で話ながら鍵をかけ エレベーターに乗り込んだ。 「ねえ 森 ちょっと待ってて。」 マンションの前からタクシーをひろう。 「東京駅まで。」  そう運転手さんに告げた。 「今 今行くから。」 「来てくれるんだ。」 「当たり前でしょ 約束したでしょ。約束を守る女だって忘れたの?」 森は、黙っている。 「大丈夫 私がしっかり充電してあげるから。少しだけ少しだけ待ってて。」  そして電話を切り  「急ぐんです。お願いします。」 何度となく運転手さんにそうお願いする私の言葉通り 空いている都内の道をタクシーが走りぬける。 森…どうした? あんたのあんな声聞いたことないから。 心の中であれこれ考えるけれど 連絡もとっていなかった私には、仕事で苦戦しているであろうこと以外は何も情報がない。 その苦戦も予想であって、もしかすると違うことなのかもしれない。 そのぐらい森に関する情報が私には少なかった。 お礼を言ってタクシーから降りると新幹線のホームまで駆け出した。
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