第1話 最愛の…

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第1話 最愛の…

藤森 千波 29歳 OL 堂々の独身 「ん…もう…。終わらない。どうしよう…」 定時が近づいているというのに隣の席からは、さっきから大きなため息とともに、何度も悲劇的な声が聞こえてくる。 いつもならその声は紛れもなく私が発する声なのだが今日は違う。 「先輩、部長に頼まれた会議資料作りに苦戦していて・・・助けてください」 悲壮感ただよう絵里ちゃんの姿に思わずクスッと吹き出してしまったが 「どれ? 貸してごらん」 絵里ちゃんの席に座ると カチャカチャカチャ 素早くキーボードを叩く 長いOL生活で身についたブラインドタッチ 「ここに載せるデーターは?」 「ああ これです」 OK カチャカチャカチャ__________ 「後は?」 「これとこれと____。」 カチャカチャカチャ_______。 「こんなもん?」 出来上がりを見せると 「さすがですね。私は、あんなに苦労していたのに…」 悲壮感からうってかわって晴々した笑顔。 その笑顔を見ながら 「何ってったってOL生活長すぎですから」 思わず私は、苦笑い。 「ありがとうございました」 深々と頭を下げるまだ2年目の絵里ちゃんに、こんな時もあったなぁ…と、遠くなりつつある記憶を思い出した。 しかし…どうしてこんな資料作りまで頼むかね? 絵里ちゃんだって、やらなきゃいけない仕事を抱えているのに。 ホッとした顔をしている絵里ちゃんを見つめながらふと我に返った。
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