第2話

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「いや、本当にあの頃は、何ひとつ野上さんにかなわなくて・・・・焦ってました・・・・俺」 これは本音だ。今でも尊敬する先輩であることは間違いない。 「今は俺がかなわないよ。海外を飛び回ってる片岡が、時々羨ましくなる」 野上さんは、そう言ってちょっと遠い目をした。 そうだ。戦いを挑むんだった。昔話をしてる場合じゃない。 「野上さん」 「ん?」 思い切って言った。 「アジア課の・・・稲葉ですけど」 「稲葉がどうした?」 意外そうな声だった。 「稲葉・・・今フリーですよね」 一瞬、野上さんの瞳が揺れた。 やっぱり俺は刑事になれる。 「さあ・・・どうかな・・・何故だ?」 「俺・・・・稲葉が気になるんです」 「え・・・・・?」 「好きなんです」 迷いながらも口に出すと、それはずっと前から分かっていたことのような気がした。 「なんで俺に告白する」 野上さんは見事なくらい一瞬で立ち直った。 「お前は、稲葉に振られたって聞いたけどな」 ここで笑えるのは凄い。でも目が笑ってなくて若干怖い。 俺もにっこり笑った。 「ええ、まあ想定内です」 目をそらしたら勝てない気がした。 「片岡がそう言うってことは、勝算があるのか?」 「いや・・・・これからです」 俺はグラスを一気に煽った。 野上さんは、何も言わなかった。 この人から稲葉を奪いたいと思った。 男として勝ちたいと思った。 ********** <再び、亮太目線> 片岡・・・・何の宣戦布告だ。 ぎり、と自分の奥歯を噛み締める音が聞こえる。 これから・・・どうする気だ・・・とは聞けない。 片岡は仕事もできるし、見た目もいい。まあ、無愛想なところはあるが。 何より、独身だ。 いや、しかし、それとこれとは別だ。 澪の話題には驚いたが、まさか片岡の告白を聞かされるとは思わなかった。 そんな話、今まで1度も澪の口から聞いたことはない。 片岡が振られた話は噂で聞いていた。 でもそれは、飲み会の誘いだったはず。 何でこんな話になってる・・・? 澪は・・・・どうなんだ。 澪は揺れないでいてくれるのか。 何故か不安になってくる。 俺は澪に何か与えることができるのか・・・・。 休日の予定も、未来の約束も、何ひとつ与えていない。 奪うだけで、何もない。 俺が与えているのは刹那の幸せだけか。
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